【今この時、学習塾開業の現実】
この2か月、学習塾開業者の方からご相談を受けることが増えてきました。
コロナ渦が一段落したことから開業塾が増えてきたのは良い事だと思うのですが、「塾生が集まらないので困っている。」というのは忌々しき問題です。
<ケース1.>
開校時期;本年2月
開校地域;京都府
形態;個別指導フランチャイズ学習塾
プロフィール;年齢48歳、家族4人、前職;サービス業、学習塾業未経験
状況;開校から3か月で塾生4名、毎月約30万円の赤字
加盟の理由;開校初月から黒字、半年後には月収30万円以上という説明を信じて加盟
初期投資金額;約1,000万円
(考察)
個別指導フランチャイズ塾の成功確率は15%以下と言われています。
個別指導塾がたくさんある中で「差別化」ができない事、開校地域の家計収入に比べ月謝が高い(フランチャイズ加盟なので月謝を自由に設定できない)事、そして、塾長として知っておかなければならない基本的なこと(例;現実的な保護者対応の仕方や子供との接し方 他)が解っていないようです。
問い合わせが12件ほどあったにもかかわらず、入塾したのが4件なのがもったいないです。
<ケース2.>
開校時期;本年3月
開校地域;埼玉県
形態;ICT教材活用フランチャイズ学習塾
プロフィール;年齢38歳、家族3人、前職;販売会社、学習塾業未経験
状況;開校から2か月で塾生2名、毎月約25万円の赤字
加盟の理由;教えられなくても学習塾ができる、AI活用のICT教材なので成績が上がる
初期投資金額;約800万円
(考察)
「教えられなくても大丈夫です。塾長は、子供の応援団長になってくれれば成功します…」と言われるのですが、この程度で塾が成功するならば高額所得者の大半は塾長になってしまいます。
また、所謂パソコン主体の学習塾を保護者は信用しません。やはり、人が関わる「血の通った指導」が個人経営塾の生命線であることは昔も今も変わらないのです。
実際に指導ができなくとも「血の通った指導;子供との関りや保護者との信用関係の構築」ができるのですが、このあたりのフォローが本部ができない事が問題です。
開業当初に塾生が集まらない理由は、①配布しているチラシの内容が悪い事②運営内容が良くないので保護者に対する説明がニーズに合わない事です。
<ケース3.>
開校時期;本年4月
開校地域;東京都下
形態;オンライン授業&ICT教材使用(フランチャイズではありません)
プロフィール;年齢52歳、家族4人、前職;商社、学習塾業未経験
状況;開校から2か月で塾生1名、ランニングコストと生活費で毎月45万円の赤字
運営内容理由;学校教育でも使ってるICT教材なので安心、時間講師の人件費がかからない事
初期投資金額;約700万円
(考察)
フランチャイズ加盟ではないので、運営内容は塾長自身で考えることになるのですが如何せん「他塾との違いや強みが打ち出せない」内容なので魅力に乏しいのです。
また、大人目線で「良い教材」でも学習意欲が高くない子・基礎学力が身に付いていない子にとっては「良い教材」と言えない場合が多くあります。
体験授業を受けても入塾しない理由です。
ある調査調査によると公立中学校の凡そ7割は、授業が理解できていないそうです。これは、コロナ渦の影響と昨年度の教科書改訂による学習量の増大と授業の仕方が変わったことからです。
益々、学力の分化(できる子・できない子)が進み子供の困惑、親の心配が増えている状況は、良き学習塾への期待と必要性も増えていることになります。
良き学習塾とは、開校地域の子供たちの成績を上げられる、保護者が信用できる学習塾ですが、塾長として「できること」を根底にした他塾と差別化された塾を創ることです。
学習塾業は、誰でもできますが誰もが成功する仕事ではなくなって久しくなります。
開業する前に、リアルな現実や成功塾長・失敗塾長の理由を知ることがとても大切だと思います。